遺産である預金が長男の妻によりほぼ全額引き出されていた事案

依頼者

60代 男性

相談前

依頼者のお母様が亡くなりました。
依頼者は4人兄弟の次男で、お父様と長男はすでに亡くなっており、お母様は長男の奥様と一緒に住んでいました。
お母様名義の預金通帳は、ご長男の奥様が持っていると思われましたが、長男の奥様は、依頼者や他の兄弟から通帳を見せるように言われても、一切見せないという状況でした。
このような状況の中で、どうしたらいいかというご相談がありました。

相談後

お母様がお住まいだった地域は都市部ではなく、ご自宅の近隣の金融機関は数が限られていたため、近隣の金融機関すべてに、当職から、お母様名義の預金がないか照会を行いました。
その結果、長男の奥様が、お母様名義の通帳から、多額の預金のほぼ全額を引き出していたことが判明しました。
その後、家庭裁判所で調停を行い、長男の奥様が現金を引き出していたことを前提とした話し合いを行い、引き出した現金の大部分を、長男の奥様が他の兄弟に支払う形で、和解が成立しました。

弁護士からのコメント

「長男の妻」には、法律上、お姑さんの遺産についての相続権はありません。
ただ、この事案のように、長男の妻とお姑さんが同居していてお姑さんの介護をしているケースはままあり、それで全く相続権がないというのも、人情としては何か違う気がします。
依頼者の方たちもその点は理解していて、長男の奥様に遺産を一切渡さないというスタンスではなかったのですが、
長男の奥様が先に預貯金を全部引き出してその後の話し合いに一切応じない、通帳も見せない、というやり方をしたために、かなり話がこじれてしまいました。
遺産に関する情報を関係者が共有する、ということが、遺産分割についての話し合いのスタートラインとなりますが、
当事者にそういう認識がないと、この事案のように、弁護士が入らないと解決できない、話し合いのスタートラインにすらつけない、ということになります。
遺産に関する情報を特定の人が独占していて、他の人は遺産があるのかどうかもよく分からない、というケースはままありますが、
弁護士が入って調査することによって、隠されてもある程度は分かります(全部は分からないこともあります)。