先取特権によって、売先の転売先に対する代金債権を差し押さえたケース

依頼者

株式会社(製造業)

相談前

依頼者は、ある取引先に、商品を売却しましたが、支払期限が来ても、その取引先は、商品代金を支払ってくれませんでした。 噂では、その取引先の経営状態はかなり悪く、いつ倒産するか分からない状態でした。 依頼者が売却した商品はすでに転売されており、転売先も分かっていました。 転売先は、まだ、その商品の代金を支払っていないようでした。

相談後

相談を受けた後、当職は、依頼者の取引先に対する動産売買による先取特権(民法第311条第5号)に基づく物上代位権(民法第304条第1項)を行使して、
取引先の転売先に対する商品売買代金債権を差押え、
転売先から、商品代金の支払いを受けることができました

弁護士からのコメント

動産を売却した場合、売主は、その商品について、先取特権という、商品代金債権の担保のための担保権を有しています。
そして、この先取特権は、その商品が転売された場合には、転売代金債権を差し押さえるという形で行使できます(これを物上代位といいます)。
これは担保権の行使ですので、裁判をやって判決を得る必要はありません。
また、担保権ですので、他の債権者に優先します。
よって、動産売買の先取特権は、債務者に資力がない場合には、極めて有効な債権回収方法といえます。
ただ、この方法により売買代金を回収するには、
少なくとも、こちらが売った商品がどこに転売されたか分かっていること、こちらが売った商品と、転売された商品が同一であることが立証できること、転売代金がまだ支払われていないこと、が必要です。
実務上は、転売先がこちらに協力してくれて、証拠となる資料のコピーを提供してくれることが不可欠となっています。